2020/04/28
恐ろしくも愛らしくもウトウ
ウトウ(Cerorhinca monocerata)完成しました。ウトウの最大繁殖地である天売島に2018年夏に訪れた時の記憶のまだ新しいうちに制作しました。といってもだいぶ経ちましたが。
変わった角と白いまゆげとくちひげが特徴のとても風変わりな鳥なので、実際、本物を見るまではどんな鳥かなかなかイメージできませんでした。でも、実物見たらなかなか愛嬌のあるかわいらしい鳥で、すっかり大好きになりました。
ただ、観察した時は主に夜。真っ暗闇の中、空から重そうな鳥が無数にドサドサ降ってきて、まっ黒い鳥が「ウーウー」と低く鳴きながら、そのへんを動き回っているなんて、ちょっとした恐怖映像(笑)です。あれは本当に普段の鳥観察とはまったく趣の異なるファンタジーめいた体験でした。今まで遠い存在だった海鳥の生態学的な役割などなど、いろいろ気づかせてくれるきっかけになりました。そんな強烈な印象を与えてくれた鳥であるから、私にとって作らない手はないのです。(ちなみに天売島に行った時の話はこちら)
イメージとしては魚をたくさんくわえてヒナの待つ穴に急いで帰る親鳥。少々前のめりなスタイルなのは、他の鳥に獲物をとられないようちょっと必死なところを作りました。顔周り以外はいたってシンプルに丸っこい海鳥の体型と色をしています。といっても単純に真っ黒ではないところは海鳥の難しいところ。


あの不思議な角状の突起は、現地でたくさん落ちていた死体の写真を撮ってきていたので、構造を確認できたのが幸いでしたが、でないとかなり戸惑ったかもしれません。
あと、口は最初から魚をたくさんくわえさせようと決めていたので、開けた状態で作り進めましたが、ここがまた難しいところで、フェルト化させる都合上、そのままあちこちから刺し進めていると、開けておいた口がどんどん埋まっていってしまうのです。そこで、見た目は完全に虐待ですが(笑)、口の中の形を保持させるためにようじをぶすぶす刺しておく、という新技を今回導入しました。おかげでうまいこといきました。

くわえているのはイカナゴ幼魚(のつもり)です。毎回言うようですが、魚は専門外なので、作っているときはちゃんと魚に見えるか不安でした。もちろん鳥ほどは作り込んでいないのですが、写真の光の具合で、光沢っぽく見えることがあり、写真でみるとなかなかよくできてるように見えますね(自分で言うな)。
夜、庭で撮影してみました。夜に観察した経験を元に制作したので、この写真が一番実物を見た時の印象に近いです。

改めてウトウのもろもろを見直していたら、また天売島に行きたくなってしまった。。。あれは本当にすごかった。
最後にあとひとつだけ。ウトウって漢字で書くと「善知鳥」なんですって、善きを知る鳥なんてかっこいいね。