2020/03/27
シマアオジ、ロシアへ
新作、といっても昨年末から1月にかけて作ったオスのシマアオジ(Emberiza aureola)です。
実は、こちらはすでに私の手元にはなく、おそらくシマアオジの繁殖地でもあるロシアの地で過ごしているはずです。これは、バードライフ・インターナショナル東京からの依頼で、1月末に宮城県伊豆沼で行われたロシアとの二国間渡り鳥等保護条約会議に出席した政府代表へのおみやげとして制作させていただきました。2018年の4カ国との会議の際は個展と重なりあまり準備時間がなく、会議内容に沿ったものが準備できなかったのですが、今回は担当者の方のアドバイスにしたがって、お互いの国に関係が深く、議題のひとつでもあるシマアオジを作ることができました。
会議でどんなことが話し合われたかについては、環境省から簡単な報告が出ていますので、興味ある方はぜひこちらをご覧ください。
>>環境省報道発表「第12回日ロ二国間渡り鳥等保護条約会議の結果概要について」
お渡しする前にと、庭でそれっぽく写真をとっておきました。それにしてもトレードマークの胸のレモンイエローがあまり見えずなんかすいません。作品ごとに「良い角度」ってのがあって、今回は前からはあまり良く撮れなかったもので。。。

シマアオジは1990年代から個体数が減り始め、IUCNレッドリストでも2000年まではLower Risk/least concernの評価だったのが、2004年にはNear Threatened、2008年にはVulnerable、2012年にEndangeredとほぼ改訂のたびに危機度が増し、2017年の最新評価においてはもっとも絶滅に近いカテゴリーであるCritically Endangeredに掲載されるまでに状況は悪化しています。レッドリストには、1980年から2013年の間に個体群が84.3%〜94.7%も減少したとも書かれています。そして急激に危機的な状況に陥った背景には、非繁殖地や渡りのルート経路における過剰捕獲などがあげられています。北海道の繁殖地でも数を減らし、2017年に確認されたのはわずか約30つがいだったそうです。昔から鳥を見ている友人が、昔は行けば普通に見られたのに考えられないと言ってたのが、急激な減少を物語っている気がします。
以前、Hong Kong Bird Watching Society ( HKBWS)のシマアオジ保護のキャンペーン活動もこのブログでとりあげました。まさに香港も渡りルート上にあり、食用の捕獲や中継地の生息環境の保全が問題になっているようです。こうした渡りの経由地も含め、多くの国での対策が急務であるのは言うまでもありません。
国境など関係なく、地球規模で移動し暮らしている鳥たちにとっては、国際的な取り組みがとても大切であることを改めて考えさせられます。途方もなく長い時をかけて地球上に適応し存在してきたにもかかわらず、人の欲の対象となったばかりにたった数十年で姿を消そうとしているなんて。。。新型コロナウイルスの猛威により、人類自身のことで手一杯なのは重々承知していますが、シマアオジのような危機的な状況にいる野生生物たちにとって待ったなしの状況であるのもまた事実。これまでも地道な保護や調査の活動を続けてきた方々への支援を忘れてはいけないなと自戒の念も込めて思います。
基本的に自分は悲観主義者なのですが、それでも最大限楽観的に考えるとすれば、世界の常識が変わるであろう今の時代を迎え、人類がこうした野生生物たちや自然との向き合い方や共存の仕方を改め、よりよい(?)ものに進化させられたらなと密かに期待します。