2020/04/27
タゲリ(
Vanellus vanellus)できました。古代エジプトの壁画研究家である母から強くリクエストされていた鳥で、ようやく作れました。まずはこのタゲリを気に入ってもらえるといいなぁと。

もうずいぶん前から言われていたのに、なかなかとりかかれなかったのは、タゲリのトレードマークでもあるあの冠羽のせい。細くて長いのをどう再現するか、いいアイデアがなかなか思いつかず渋っていました。でも単純に長い冠羽数本に針金を仕込み形を保持できるようにしてみました。出来上がりには満足ですが、取り扱いの際はかなり気を使うものになってしまったので持ち運びは今後の課題です。あと、翼の金属光沢ももちろん難題でしたが、光の当て方次第で金属光沢っぽく見えるようになればいいかなという程度で、おそらく羊毛自身の光沢も多少はあるのでまぁこんな感じでもいいかなと思っております。

母からは、古代エジプトの壁画の中では「民衆」を示す鳥だからぜひ作ってといわれていました。『古代エジプトの動物』(黒川哲郎著)という本によると、その頃タゲリがレキトと呼ばれていて、レキトは「一般の人々」を指す言葉であったそうです。

私としては、なぜタゲリが一般の人々という言葉と結びついていたのか、絶対タゲリの生態に関係があるはずなので、そのあたりに大変興味があります。

ちなみにタゲリは本州には冬鳥として渡来し、田んぼなどの開けたところで見られます。ミミズや昆虫などを食べるようです。ちなみに去年英国に行った時にも現地で見ましたが、この時は日本では見られない夏羽でした。夏羽は翼の白い模様がなくなり鮮やかな色になり、顔の模様も若干めりはりが効いた配色になっているようですが、もっときちんと見ておけばよかったのです。そしてエジプトでは、日本同様、冬鳥のようなので、今回は冬羽で制作してみました。
また、今回顔周りを作っていて、あれ、これってなにかに似てるな〜と思ったら、シンボル「ウジャトの目」に似てるんじゃない。

ウジャトとは、古代エジプトの守護神(後記:女神じゃなさそうなので、修正しました)だそうで、その目を「全てを見通す知恵」や「癒し・修復・再生」の象徴(シンボル)としていたそうです。現代でもおみやげものなどでもこのウジャトの目が使われているのでなんとなく馴染みのあるもので、見たことある人もいるかもしれません。全然関係ないはずなのですが、私にはどうしても似てるように見えましたが、私だけ? なぜなら本来「ウジャトの目」はハヤブサの姿をしたホルス神の目だと考えられているそうで(結局鳥なんですけど)、もちろん見れば断然ハヤブサだな〜と思うのですが、このタゲリの目力にも古代エジプトの人がなにか感じ、興味を持ったのではないでしょうか。
母から古代エジプトの話は昔からよく聞いていて、歴史にまったく興味のない私でも、あの壁画にたくさん登場する生き物たちには興味津々で、真剣に鳥に向き合い始めた最近はなおその関心は強くなりました。特に象形文字であるヒエログリフに登場する生き物たちは究極に簡略化して描かれているのに、どんな生き物なのかがちゃんとわかることに驚きます。
ヒエログリフとしてのタゲリ(右列の鳥がそれ)

現代のように物や見るべきものが多すぎると、物事の細部や正確さをきちんと把握する能力が薄れていく気がしますが、きっと古代エジプトの時代の人たちの観察力は今では計り知れないものだったんだろうなと、その頃の人たちに思い馳せてみたりして。母の影響ですが、おもしろい動物ネタがたくさんあるので、またちょいちょい古代エジプトネタを挟み込んでいこうと思います。